Human Rights Watch

様々な切り口からLGBTの人権をサポート

【訪問団体】

【団体概要】

Human Rights Watchはアムネスティ・インターナショナルとならんで世界をリードする人権NGOのひとつ。ニューヨークに本部があり、世界約90カ国の人権状況を常時調査/モニターし、(実際に調査員を人権侵害の現地へ派遣し被害者や加害者の声を直接きくことによって質の高い情報を集めるようにしている。)政策提言を行い、人権侵害を止めるためのグローバルな動き作りをしている。世界中のすべての人々の人権を守ることがミッション。2009年には東京オフィスが開設。また2014年にLGBTに関する取り組みを行う部門が設置された。

【印象に残ったこと】

今回、Human Rights WatchのLGBT部門で活動しているKyleさんにお話を伺うことができました。大きくわけて、3点ほど印象に残ったことを簡単に紹介させてもらいます。

 

1. 資金面での中立性・独立性の維持

 

 

活動資金のお話を伺った時に驚いたのがHuman Rights Watchでは政府からの資金を一切受け取っていないということです。団体概要でも述べたように人権侵害の加害者が政府である場合、政策提言を行う際、資金面での問題が絡んできてしまうことになります。その状況を防ぐために、資金はチャリティーディナーや個人からの寄付のみに限定しています。メンバーの一人から、個人寄付者からHuman Rights Watch に対する活動へのプレッシャーや反対があった場合はどうするのかという質問がありました。その場合は寄付をお断りさせてもらうという強気の姿勢を見せるとおっしゃっていたことも非常に印象に残りました。強固な資金体制、そして中立・独立性を保つことの大切さを教えてもらいました。日本ではまだまだ人権問題に対する意識が低く、資金面では困難を強いられています。少しでも多くの情報を発信して人々に知ってもらい、寄付の募り方も、チャリティーディナーなど新しい発想で考えていくことの大切さを実感しました。

 

2. 政府へのアプローチの仕方

 

アメリカをはじめ、中東、アフリカなどではLGBTであることを理由に、直接的な差別や暴力に苦しみ、最悪の場合、死刑になってしまう国もあります。一方で日本では、目に見える差別というものがあまりなく、人々の無知による偏見があるように思います。政府による、LGBTを禁止する法律などもありません。そのため、目の見えない敵にどう立ち向かい、LGBTの権利を訴えていけばいいのかわかりにくい場合があります。そのことについて、Kyleさんにお聞きしてみました。すると政府が人々の権利を侵害していない限り、人権問題にはならないけれども、個人間の争いに政府がしっかり対応しないと人権侵害になるということをおっしゃっていました。日本でもLGBTの人々に困難があるときは耳をかたむけ、対応していく(法整備なども含めて)責任が政府にはあるということです。感情論に流されず、質の高いデータを地域メディアや国際メディアなどありとあらゆる方面に発信し、国際社会の注目を引きつけ、世論を作り上げる。その上で政府に圧力をかけるというやり方は、非常に効率的で影響力のあるアプローチの仕方だと感じました。

 

3. 焦点をしぼること

 

今回お話を伺ったKyleさんは日本のLGBTのこどもへのいじめ調査にも力を入れていて、今年の5月にも調査結果を発表する予定だそうです。どうしてLGBT問題の中でもこどものいじめについて焦点をあてているのか疑問に思いました。お話を聞いてみると、Kyleさんも自身が15歳のとき、女っぽいということでいじめを受けた経験があるそうです。学校というのは子供達に前向きな人生を歩んでもらうための希望と自信をもたせる安全で大切な場所であるということを強調していました。そのためにLGBTのこどもへのいじめという切り口から日本のLGBT問題に取り組んでいるということです。幅広くやるのではなく、的を一つに絞ってアプローチしていく方法は非常に説得力のあるものだと思い、参考になりました。同性婚などの問題は比較的メディアに取り上げられたりして、注目を集めやすいですが、こうしたLGBTの若者などの問題もしっかりと意識して取り組んでいくべき課題だということを再度実感しました。

また漫画を使ってLGBTを伝えていくプロジェクトも進めているということで今後が非常に楽しみであり、時代や文化に合わせた新たな情報発信の形があるということを学びました。

 

☆Human Rights Watchのウェブサイトは日本語でも読むことができます。LGBTに関する記事も掲載されているのでぜひ読んでみてください!(ゆきと)