<本章目次>
●教育現場におけるLGBTフォローの重要性
●LGBTの子どもが困る可能性の多いこと
(毎日新聞「ありのままで 性的マイノリティと学校 上下」参照)
●LGBT教育に関する3つの課題
1、異性愛を前提とした教育
2、LGBTQの自己肯定感が低くなりやすい成育環境
3、教育現場におけるLGBTの知識不足・教育方法の難し
LGBTの自殺防止に取り組む民間団体「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」は昨年、LGBTの若者約600人に初めて学校生活調査を実施した。約7割がいじめや暴力を受けた経験があり、そのうち約3割が「自殺を考えた」と答えた。深刻な実態が明らかになった。
2004年に特例法が施行されたことを背景に、文部科学省は10年、性同一性障害の児童・生徒について、教育相談を徹底し本人の心情に十分配慮した対応をするよう都道府県教育委員会などに通知した。しかし、全国の小中高校などを対象に昨年実施した実態調査では、学校が把握した事例に限っても、特別な配慮をしている割合は6割にとどまった。性同一性障害以外の性的マイノリティーは通知や調査の対象になっていないが、配慮が必要なのは当然だ。
東京都の男性(23)には忘れられぬ記憶がある。ゲイで、中学時代から男子だけの場に苦痛を感じた。中学2年での内科検診。上半身裸で待つのが嫌で担任教諭に相談した。「男らしくないこと言うな」。職員室中の教員に笑われた。養護教諭を目指している男性はこう思う。「学校も『異性が好き』が基本になっているが、そうじゃない子もいる。一言でもフォローしてくれる先生が増えてほしい」
一方で、高校の授業で「救われた気がした」というレズビアンの東京都の会社員(22)。家庭科で結婚がテーマになった時、教諭が「世の中には同性をパートナーにする人もいる」と説明してくれたのだ。「先生は、同性愛を笑いのネタにせず、からかう生徒がいたら『差別だよ』と注意してほしい。ちょっとしたことから周囲の意識は変わるはずだから」【藤沢美由紀】
◇男女で分けられているもの
EX>>トイレ、着替え、制服、健康診断、宿泊行事、音楽などのパートわけ、体育、敬称(さん、君)、一人称(僕、私、俺)、持ち物の色、名簿、席順 etc
◇男女で二分したり、異性愛を前提としたもの
Ex>>保険、性教育、家庭科、道徳、男らしさ・女らしさを押し付けることもの、恋愛の話、進路指導や人生設計
<教員が相談を受けた際のポイント>
・セクシュアリティを決めつけない
・「話してくれてありがとう」と伝える
・何に困っているのか聞く
・誰かに話しているか、話していいかを確認する
(本人の同意なく第三者に伝えない)
・支援、相談機関などにつながる情報を伝える
・最適な対応は一人ひとり違うため、子供との対話の中で対応を考えていく
<教員が今日からできること>
・LGBTに関する本を学級文庫や図書室に置いたり、ニュースについて教室で話したりする
・学級通信など配布物や掲示物で情報発信する
・身近にいるLGBTの人のことを話す
(*以上NPO法人「ReBit」作成の資料より要約)
これまでの学校教育での同性愛に関する情報の取り扱い状況について、ゲイ、バイセクシュアル男性に尋ねると、「一切習っていない」76.1%、「異常なもの」4.1%、「否定的な感情」10.2%を合わせると全体の9割以上が不適切な対応をされていることが示されました。
また、性育歴における出来事のグラフ見てみると、ゲイ、バイセクシュアルといった性的指向に気づいたときに66.2%が悩んだ経験があり、44.1%はそれを相談したいことがあり、実際に相談することができたのは24.7%だった。さらに異性愛を中心とする社会の中で結婚のプレッシャーを感じた経験があるものは48.8%、男性とセックス後に罪悪感を感じたものは38.7%であり、「ホモ、おかま・おとこおんな」といった性的指向に関連する言葉による暴力被害経験割合は54%であり、同性愛者が育つ環境は現在の日本では、否定的な感情や、生きづらさを抱えやすい状況にあるといえます
~教員のLBTに関する意識~
平成25年、6つの自治体で約6,000人の教員に対してアンケートと教員研修が実施されました。そのアンケート調査結果からは
●先生方の約7割が「性同一性障害」について授業で教える必要がある
●先生方の約6割が「同性愛」について授業で教える必要がある
と考えていることが分りました。
その一方、
●実際に授業で取り入れた割合…約14%
●大半の先生方に性的指向について誤解あるいは不確かな知識や認識がある
ex)
・的指向は本人の選択の問題と捉えている人は38.6%
・よく判らないは32.8%
ということもわかり、教員自身がどう授業内でLGBTに関して取り扱えばよいのかわかっていないことや、また多くの教員自身がLGBTについて正確な知識がないことがうかがえました。
また、性の多様性に関する研修会の受講ニーズは、6割を超える先生方が参加したいという意向を持っており、多くの教員自身がLGBTに関して関心があることはわかります。教育現場に人たちが正確なLGBTの知識をもつことはLGBTユースを取り巻く環境を改善するためにも必須の課題です。
(*子どものときに性同一性障害ではないかと自覚した子どもたちを追跡した結果、子どもの性同一性障害が必ず大人の性同一性障害になるのではなく、同性愛であったという事例もあるため、同性愛といった性的指向と性同一性障害の両方を正しく理解したうえで、セクシュアリティについて対応していく体制を整備しないと、大人が子どもに間違った線路を引いてしまう可能性もある。)